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| ペットに関する最新民事判例 |
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平成14年11月9日 報告者 弁護士 渋谷 寛 宇都宮地方裁判所 平成9年(ワ)第529号損害賠償請求事件 平成14年3月28日判決 ペットが医療過誤により死亡した場合に慰謝料等の損害賠償額が高額に認められた事例。 第1 はじめに 1 ペットが死亡した場合の飼い主の精神的苦痛の賠償は、物の損害が填補された場合には、そのことで精神的苦痛に対する損害も慰謝されたものとみなされ認められないのが原則である。 もっとも、ペット飼育における愛情をかけることなどの特殊性、加害者が被害者の精神的苦痛を認識していた場合には、慰謝料が認められる。認められるとしても、その額は低額であった。 2 本裁判例のように獣医の医療過誤が争われ飼い主の慰謝料が問題となった裁判例は少ない。 飼い主の慰謝料が認められた判例としては、東京地方裁判所昭和43年5月13日判決(財産的損害及び飼い主の慰謝料として5万円の損害賠償認めた。判例タイムズ226号164頁、判例時報528号58頁)がある。 逆に飼い主の慰謝料が否定された判例としては、大阪地方裁判所平成9年1月13日判決(医療過誤を前提に財産的損害胎児2匹分を含む3匹分で70万円、弁護費用10万円を認め、飼い主の慰謝料については愛玩用ではなく商品用飼育であることを理由に否定、判例タイムズ942号148頁、判例時報1606号65頁)、と東京地方裁判所平成3年11月28日判決(医療過誤そのものを否定した、判定タイムムズ787号211頁)がある。 3 本判例は、医療過誤を認めた上で、物的損害50万円、慰謝料20万円、弁護士費用20万円、治療費等32、500円の損害賠償を認めた。比較的高額な賠償責任を認めた判例として注目できる。 第2 判決内容について 原告(死亡した猫の飼い主)の請求額は223万5500円である。 1 当事者間に争いのない事実 死亡した猫はアメリカンショートヘアーの一種である。 被告は獣医師である。 5才の雌(メス)猫である。 避妊手術の2日後に死亡した。 2 争点 (1)本件手術の注意義務違反ないし過失の有無 (2)原告の損害発生の有無と損害の内容 3 争点に関する原告の主張 (1)争点1について排卵管と尿道を一緒に結紮した。 (2)争点2について ア 財産的損害100万円 イ 慰謝料100万円 ウ 医療費等3万2500円 エ 弁護士費用20万3000円 オ 合計223万5500円が損害額であり支払われるべきである。 4 争点に対する被告の主張 (1)争点1について、尿道管も合わせて結紮するようなミスをしていない。 (2)争点2について、市場での交換価値はない 5 裁判所の判断 (1)争点1について (認定) 腎臓を含めた尿の排出経路に何らかの異常 尿管を卵巣動脈とともに誤って結紮したことが死亡の原因 (2)争点2について (慰謝料額を算定するについて考慮した点) 30万円でブリーダーから譲り受けたこと。 優秀な血統を持つショーキャットであること(平成4年度の年間総合成績がアメリカンショートヘアー種1位、全種でも5位に入賞した実績)。 家族の一員ともいうべき愛情を注いでいたこと。 繁殖は考えていなかったこと。 (裁判官の判断) 財産的価値は本件手術時点で50万円。 慰謝料20万円 医療費等として3万2500円 弁護費用20万円 の合計93万2500円の支払いを命じた。 第3 まとめ 本件は控訴されて東京高等裁判所第20民事部において平成14年6月4日、第一審の認容額を上回る和解が成立した。 第一審が、猫死亡の物的損害を50万円と認定し、その4割にあたる20万円の慰謝料を認めたことは、額としても、割合としてもこれまでになく高いので、今後この裁判例に追従するような形で、他の裁判の賠償額が高額化してゆくことが予測できる。 第4 今後の論点 死亡ではなくペット傷害の場合の慰謝料請求の可否 ペット自身の精神的苦痛の賠償(ペットの慰謝料)請求の可否 以上
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